相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかった場合はどうなるのですか?

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相続人

相続人である兄弟同士で揉めてしまい、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまりそうにないのですが、その場合はどうなりますか?

さつき相続

民法上の法定相続分などに応じて申告する必要があり、配偶者の税額軽減等の適用を受けるには一定の手続きが必要となります

目次

未分割の場合の申告の流れ

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内に行います。

例えば、令和4年10月3日に死亡した場合は令和5年8月3日が申告期限になります(もし申告期限が土曜日、日曜日、祝日等となるときは、これらの日の翌日が期限となります)。また、申告期限までに申告をしなかった場合や、実際より少ない額で申告をした場合には、相続税に加えて加算税や延滞税のペナルティが課せられる場合があります。

上記の例で行きますと、遺言書等がなく、申告期限である令和5年8月3日までに相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合には民法上の法定相続分や包括遺贈の割合に従って相続税を計算することになります。
→相続税の支払いを遅らせるために、故意に遺産分割を成立させないということがまかり通ってしまうと、課税の公平性が損なわれるため、たとえ遺産分割が成立していなくても一定のルールのもとに申告することになります。

遺産分割が未了の場合は配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用できません未分割で申告する場合で、これらの特例の適用を受けるためには、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を添付します

申告期限後3年以内の分割見込書

同見込書には、分割されていない理由、分割の見込みの詳細、適用を受けようとする特例等(配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など)を記載します。
→理由は遺産分割協議が整わない等、見込みは相続人間で協議中のため3年以内には分割が成立する予定等

相続税の申告期限から3年以内に遺産分割協議が成立した場合、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求又は修正申告を行うことができます
→配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などが適用できた結果、当初の納税額よりも相続税額が少なくなった場合は差額分の納税額が還付されます(更正の請求)。逆に、当初の納税額よりも相続税額が高くなった場合は差額分を追加で納税します(修正申告)。

なお、申告書の提出時に同見込書が添付されていなかった場合は、原則として上記の遺産分割が成立した場合に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けることはできませんが、所轄税務署長が同見込書の添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは適用できる場合があります(相続税法19の2④等)。

遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書

相続税の申告期限から3年以内に遺産分割協議が成立しなかった場合で、以下のやむを得ない事情がある場合は相続税の申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を所轄税務署長に提出します(相続税法施行令4条の2②)。
→提出していないと、遺産分割成立後に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの適用が受けられません。申告期限後3年以内の分割見込書の場合と異なり、宥恕規定はありませんのでご注意ください。

一.申告期限の翌日から3年を経過する日において、その相続等に関する訴えの提起がされている場合(その相続等に関する和解又は調停の申立てがされている場合において、これらの申立ての時に訴えの提起がされたものとみなされるときを含む)(相続税法施行令4条の2①一)

二.その相続等に係る申告期限の翌日から3年を経過する日において、その相続等に関する和解、調停又は審判の申立てがされている場合(相続税法施行令4条の2①二)

三.その相続等に係る申告期限の翌日から3年を経過する日において、その相続等に関し、民法の規定により遺産の分割が禁止され、又は相続の承認又は放棄をすべき期間の規定により相続の承認若しくは放棄の期間が伸長されている場合(その相続等に関する調停又は審判の申立てがされている場合において、当該分割の禁止をする旨の調停が成立し、又は当該分割の禁止若しくは当該期間の伸長をする旨の審判若しくはこれに代わる裁判が確定したときを含む)(相続税法施行令4条の2①三)

四.前三号に掲げる場合のほか、相続等に係る財産がその相続等に係る申告期限の翌日から3年を経過する日までに分割されなかったこと、及びその財産の分割が遅延したことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合

なお、上記四の「やむを得ない事情があると認める場合」とは、以下に掲げるような事情により客観的に遺産分割ができないと認められる場合をいうものとされています(相続税法基本通達19の2-15)。

1.当該申告期限の翌日から3年を経過する日において、共同相続人又は包括受遺者の一人又は数人が行方不明又は生死不明であり、かつ、その者に係る財産管理人が選任されていない場合

2.当該申告期限の翌日から3年を経過する日において、共同相続人又は包括受遺者の一人又は数人が精神又は身体の重度の障害疾病のため加療中である場合

3.当該申告期限の翌日から3年を経過する日前において、共同相続人又は包括受遺者の一人又は数人が法施行地外にある事務所若しくは事業所等に勤務している場合又は長期間の航海、遠洋漁業等に従事している場合において、その職務の内容などに照らして、当該申告期限の翌日から3年を経過する日までに帰国できないとき

4.当該申告期限の翌日から3年を経過する日において、上記一から三までに掲げる事情又は上記1から3までに掲げる事情があった場合において、当該申告期限の翌日から3年を経過する日後にその事情が消滅し、かつ、その事情の消滅前又は消滅後新たに上記一から三までに掲げる事情又は上記1から3までに掲げる事情が生じたとき

「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」は「申告期限後3年以内の分割見込書」とは異なり、やむを得ない事情(客観的に遺産分割ができないと認められる)があり、そのことについて所轄税務署長の承認が必要です

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