税務調査で私(専業主婦)の財産が相続財産に含まれると指摘されたのですが・・・

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相続人

亡くなった主人の相続税調査で私の名義の預金も相続財産に含まれると言われたのですが、私の財産も関係あるのですか?

さつき相続

基本的に、配偶者である奥様の財産は相続財産に含まれませんが、状況によっては「名義財産」の検討が必要となる場合があります

目次

名義財産について

相続税の課税対象となるのは、基本的に被相続人名義(以下では父が亡くなったと仮定)の財産です。

ただし、相続税では名義だけで判断するのではなく、その財産の原資は何か、支配管理は誰が行っていたか、名義が違うのであれば贈与が成立していたかどうかなど、実質的な所有者は誰かという観点を加味して総合的に評価を行う必要があります。

贈与は例えば、父があげます、子どもがもらいますという両者の合意がある場合に成立しますので、そもそも父があげたつもりがなかった、子どもがもらったことを知らなかった等という場合には贈与が成立していないと考えられます。

民法549条
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

おそらく普段生活をされていて、夫婦や家族であれば、あまり財産の名義を考える機会はないかもしれませんが、税務では実質課税の原則に基づくため、この名義財産に対する理解が非常に重要となります。

子ども、孫名義で問題となる場合

子ども等の名義で問題となる典型的なケースは、父が子ども等に知らせずに預金通帳を作成して預金を積み立て、父自身が管理を行っていたケースです。

この場合、子どもがその預金の存在を知らないため、前述の贈与が成立していないと考えられます。また、預金の管理も父が行っているため、例え名義が子どもであっても、実質的には父の財産であると判定されることがあるのです。

子どもが幼いうちは多額の現金を持たせるのは教育上良くないと考えられる親御さんは多くいらっしゃいますが、税務上は問題となる場合があることにご留意ください。

配偶者名義で問題となる場合

上記の子ども名義の財産の場合は、まだ比較的ご理解いただきやすいと思いますが、配偶者である妻名義の財産における夫の名義財産の判定は難易度がかなり上がります。

例えば、お亡くなりになられた夫の預金が5千万円、結婚後は専業主婦だった妻の預金も5千万円であったとします。

ここで、税務をあまりご存じない一般の方に上記の状況を見てもらっても、おそらく「裕福なご家庭ですね」ぐらいの感想しかなく、特に疑問を持たれる方は少ないと思います。

しかし、相続税を行っている税理士や税務署は「もしかしたら・・・」と名義預金の可能性を視野に入れると思います。

すなわち、一般的に専業主婦だとお給料がないはずなのに、5千万円も蓄財できているのはなぜなのだろうかと疑問を持つのです。

妻固有の財産と考えられるケースとしては、例えば、夫からの贈与、結婚前に働いていたときのお給料やパートの収入、結婚持参金、両親からの相続、年金収入、賃料収入や資産運用等による収入等があります。

もし上記のいずれにも該当せず、妻固有の財産と言える明確な理由がなければ、名義財産の検討も必要になるケースもあるものと思われます。

ちなみに、夫から毎月一定の生活費を妻に渡してやり繰りをお願いする代わりに、生活費の残りは妻のお小遣いにしてもいいよというケースは世間一般によくあると思われます。

この場合、うまくやり繰りを行い、数十年と長年に亘れば、それなりの残高を形成している場合もあるものと思われますが、このような経緯により蓄財された妻の財産について名義財産ではないと争った趣旨の裁判例や裁決事例もありますが、なかなか認められにくいという一般論は念頭に置いておいた方が良いと思われます。

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