財産関係の終活の始め方

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ご相談者

残された子どもたちのために、自分が亡くなった後のことを整理しておきたいのですが・・・

さつき相続

いわゆる終活には色々な準備が必要ですが、ここでは財産面に焦点を当ててご説明させていただきます。

終活は、主に大きく2つに分かれると思います。

一つは、ご自身の最期に向けて、人間関係、財産関係、医療・介護関係、葬儀・お墓関係などを整理すること。

もう一つは、これからの残りの人生をどのように生きるかを改めて考えることです。

財産面以外にも色々と検討する必要がありますが、一旦ここでは財産関係の整理について、ご説明させていただきます。

目次

財産関係の整理の始め方

財産、債務の洗い出し

寿命は神のみぞ知るところとなりますが、少なくとも平均寿命+αぐらいまでは生きることを想定して、現在の財産の総額と毎月の収入、債務の返済状況を確認するところから始めます。生前贈与等の相続対策は、この後のことになります。

かつて、相続対策をしなければならないという強迫観念にも似た思いがあり、十分な老後資金を確保せずに生前贈与を行われていて、これは危ないなと思ったケースに遭遇したことがありますが、これは財産、債務の洗い出しを行っていなかったから、または不十分であったからだと考えられます。

平均寿命はどんどん伸びていく傾向にあり、現在は100歳時代とも言われています。もしご自身に介護が必要になった時に、子どもが必ず助けてくれる保証はあるでしょうか。

ここは色々な考え方があるかと思いますが、個人的には老後の財産の主導権はご自身で握っておくべきで、生前対策は無理のない範囲で行うのが良いと考えます。

昔、お客さんから「孫が毎年会いに来てくれるのは、少なからず、お小遣いをもらえる期待があるから。一気に生前贈与するのではなく、毎年少しずつ分け与えるのがいいんだよ」と伺ったときに、なるほどそのような考え方もあるのだなと思ったことがあります。

また、財産と債務を一覧にまとめておくと、残された相続人が相続手続きを行う際に役立ちます。

相続税の申告が必要な方であれば、財産債務を確定して遺産分割協議を行い、申告を行うまでに10か月しか時間がありません。

例えば、預金一つとってみても、預金は通帳があれば、すぐに把握できると思いますが、最近は楽天銀行やセブン銀行などネット銀行のご利用も多くなっていますので、ご本人でないと把握しにくい財産もあります。

また、残された財産で返済しきれない債務がある場合は、相続人に相続放棄や限定承認を行う判断材料にもなります。相続放棄等は相続を知った時から3か月以内に手続きを行う必要があり、債務の調査に十分な時間をかける余裕がありません。

生前贈与

生前贈与には大きく分けて、暦年贈与と相続時精算課税による贈与の2つがあります。

暦年贈与

贈与者(あげる人)も受贈者(もらう人)にも制限はなく、贈与を受ける人が合計110万円まで非課税という、皆さまにもご存じの方が多い一般的な贈与です。

相続財産がそれほど多額でない場合には、この110万円の非課税枠の範囲内で贈与を行うこともありますが、相続財産が多額で相続税率が高率となる場合は、想定される相続税率よりも低い範囲、例えば310万円(贈与税率は最低の10%)で贈与を行う場合もあります。

留意点としては、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に持ち戻して相続税を計算する必要があります。この場合、既に納付した贈与税のほうが高ければ、還付となる場合もあります。

また、贈与財産が高額かつ重要で(自社株式など)、後から贈与の事実が問題となりそうなときは贈与契約書の作成、贈与者と受贈者の署名(できれば押印も)に加えて、贈与契約書に確定日付を取ることもあります。

確定日付はお近くの公証役場で、確定日付が欲しい旨をお伝えいただくと700円程度で、訪問日のハンコをもらうことができ、贈与契約書を後から作成したのではないかという疑いを防ぐことができます。

相続時精算課税

原則として60歳以上の父母または祖父母から、20歳※以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
※令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります。

相続時精算課税は、その名のとおり、生前の贈与については相続と一体と考え、相続時に精算して課税しますという制度になります。

主な長所としては、2,500万円まで贈与税が非課税になることが挙げられます(2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税がかかり、相続税申告時に精算します)。例えば、賃貸マンションなど家賃収入で相続財産がどんどん増加するものを先に贈与しておけば、今後の家賃収入の増加を受贈者に移転することができ、相続財産の増加を抑えるとともに相続税の納税資金を準備することができます。

また、相続時精算課税制度を適用したとしても、最終的に相続税が基礎控除額以下で申告不要な場合は贈与税だけでなく、相続税も支払う必要がないことも長所となります。

他方、主な短所としては、相続時精算課税制度を選択する手続きを取る必要があることや、一度この制度を選択すると暦年贈与には戻れない※ことから毎年の110万円の非課税枠が使用できなくなることです。
※相続時精算課税は贈与者ごとに選択することが可能です。例えば、父からは相続時精算課税を選択し、母からは暦年贈与ということも可能です。

遺言書の作成

遺言書の作成と言うと、一部の資産家だけというご認識の方もいらっしゃるかと思いますが、最近の傾向として遺言書を作成される方が増えてきています。

例えば、兄弟間の折り合いが悪く、遺産分割協議を行うことが難しそうという場合や、相続人が配偶者と被相続人の兄弟で遺産分割協議を避けたい場合などです。

今は、兄弟平等という意識が強いことに加えて、兄弟の配偶者が口を出してくるケースもあり、揉めることが多くなってきているため、うちは大丈夫と思っていても念のため作成されることもご検討の価値があると思います。

ちなみに、遺言書は一度作成したら確定というわけではなく、後日に撤回したり、書き直したりすることも可能です。

なお、当事務所が関与して遺言書を作成していただく場合、付言事項を記載することをお勧めしています。

付言事項は遺言書を作成する上で必須の項目ではありませんが、なぜあなたが遺言書を作成したのか、このように財産の分割を考えたのか、残された相続人への感謝の気持ちとご自身が亡き後のことをどうしてもらいたいと考えているか等をお伝えできる最後の機会となることと、この記載により相続人同士の争いを回避できる場合があるからです。

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