大家さんがインボイス制度の登録申請をした場合、毎月インボイスを発行する必要がありますか?
インボイス制度の登録申請を行うことにしたのですが、今後は今まで発行していなかった請求書を発行することになるのですか?
口座振替等のため、今まで請求書を発行していなかったケースでは、一定の手続きにより、今後も請求書を発行しないことが可能です
大家さんにとってのインボイス
まず、大家さんのすべてがインボイスの登録申請を行う必要はありません。
例えば、居住用マンションの家賃収入のみの大家さんは売上のすべてが非課税売上となるため、インボイスの登録申請は不要と考えられます。
以下では、事務所や駐車場の賃貸をしていて、売上の中に課税売上がある場合で、検討の結果、インボイスの登録申請を選択することとされた大家さんを前提にご説明します。
口座振替等による場合のインボイスの保存
家賃については、昔ながらに現金で回収されているケースもあるかと思いますが、今では口座振替又は口座振替のケースが多いのではないかと思われます。
口座振替等の場合、契約書で支払金額や支払時期が確定しているため、改めて毎月、請求書や領収書を交付されていないと思います。
では、口座振替等の場合でインボイスの登録申請を行った場合、毎月インボイスを発行する必要があるのでしょうか?
インボイス制度の趣旨からは、口座振替等の場合であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則としてインボイスの保存が必要となります。
インボイスを発行する場合、一定期間の取引をまとめて発行することが可能であり、また借主さんがインボイスの記載事項を満たす仕入明細書を作成して大家さんの確認を受けることも可能ではありますが、いずれにせよ、今までの取引慣行で必要なかった作業が発生するのは正直、煩雑だと思われます。
結論から申し上げますと、以下の書類を備えておいていただければ仕入税額控除の要件を満たすこととされていますので(消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問85)、毎月のインボイスの発行は不要となります。
1.口座振替の場合
インボイスに必要な記載事項について、一つの書類にすべてが記載されている必要はなく、複数の書類に分けて記載することにより、それらの書類全体でインボイスの記載事項を満たすことになります。
よって、インボイスの記載事項のうち、課税資産の譲渡等を行った年月日以外の事項が記載された賃貸借契約書と、課税資産の譲渡等を行った年月日の事実を示す通帳を合わせて保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
もし賃貸借契約書がインボイス制度の開始以前である令和5年9月30日以前からの契約に係るものであり、契約書に登録番号等のインボイスとして必要な事項の記載が不足している場合には、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受けて、契約書等とともに保存していれば問題ないこととされています。
インボイスの記載事項
1.適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
2.課税資産の譲渡等を行った年月日
3.課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
4.課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
5.税率ごとに区分した消費税額等(消費税額及び地方消費税額に相当する金額の合計額)
6.書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
2.口座振込の場合
前述の契約書と銀行が発行した振込金受取書を合わせて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。