相続二刀流への道

さつき相続相続二刀流(相続に強い税理士×司法書士)を目指した理由と司法書士試験、今後の展望についてお話します
相続に強い税理士×司法書士を目指して司法書士の勉強を始め、ようやく令和7年度に合格することができました(現在、未登録)。
今回は、相続二刀流を目指した理由と今後の司法書士受験生のご参考となるように司法書士試験について記載します。
なお、司法書士試験の勉強方法については私のやり方をそのまま取り入れていただいても必ず合格できる保証はありませんので、あくまでもご参考程度にお読みいただければ幸いです。
相続二刀流を目指した理由
私は公認会計士として上場企業の会計監査から、M&Aなどにおけるデューディリジェンス(資産査定)や組織再編などの財務コンサルティング業務、税理士として同様の税務コンサルティング業務のほかに相続税申告業務などを行ってきました。
これらの様々な業務はそれぞれ奥が深くやりがいのあるものでしたが、その中でも最も興味があるのが相続税申告業務であり、また組織再編などと組み合わせて検討する事業承継業務でした。
これらの業務を行っていくうちに、司法書士は税理士と非常に密接な関係にあることを知ったのですが、その時は正直、別の世界の人たちという感覚でしかありませんでした。しかし、相続業務に特化していくと、税金と登記は相続に占める割合が大きく、一人でどちらもできればいいなと漠然と考えるようになりました。
それから数年を経て、勤務税理士から独立税理士を考え始めた際にほかの税理士との差別化を図るため、司法書士試験の勉強を決意したのが40代半ばでした。
お客様からすると税務も法務もワンストップでご依頼できたほうが効率的であることは明らかです。自分自身の知的好奇心ということもありますが、それがやはり相続業務をご依頼いただくお客様のためになると考えたからです。
そして遂に司法書士試験の勉強に取り組むことになったのですが、この二刀流への道は想像していたよりとても長く険しい道でした・・・
おそらく皆さまのお近くに税理士または司法書士はいらっしゃっても、その両方を持たれている方はほぼいらっしゃらないのではないかと思います。相続業務を行う上で最強の組み合わせと言われるぐらい相乗効果が高いのにその両方を取得している人が少ないのは、税理士と司法書士は試験科目が被っておらず、それぞれ3,000時間以上を要するといわれる難関国家試験であるため、その両方を取得することが難しいことに加えて、取得後の維持も難しいためだと考えられます。
司法書士試験開始時の前提条件
年齢は40代半ばからの挑戦で、当時は税理士法人に勤めており、公認会計士と税理士の資格を保有していました。
私は公認会計士試験で商法(現在の会社法と商法)を勉強しており、また民法を選択科目としていました。何が言いたいかというと、私が司法書士試験の勉強を始めたときは、主要4科目(民法、会社法、不動産登記法、商業登記法)のうち2科目についてはある程度の知識を有していたということで全くの法律初心者からスタートしたわけではないということです。
司法書士試験は11科目という範囲の広さがありますが、そのうち上記主要4科目の負担が重いため、そのうち2科目についてある程度の知識があるということは全くの法律初心者と比べるとアドバンテージがあった状況です。そのことも念頭においていただければ幸いです。
司法書士試験の戦い方
司法書士試験は民法、会社法・商法、不動産登記法、商業登記法、憲法、刑法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、供託法、司法書士法の11科目の択一式と不動産登記法、商業登記法の記述式の2つで構成されています。
令和7年度で行くと合格率はおよそ5%で、択一式(午前、午後)、記述式のいずれにも足切り点が設けられており、すべてにバランスよく解答しなければなりません。
ここでまず大事なことは試験に受かることです。試験に受かったからと言っても、実際にはまだまだ勉強しないといけないことも多く(例えば、相続人を確定するためには戸籍を読む必要がありますが、戸籍の読み方は試験範囲ではありません)、実務に必要な勉強は続けていかなければならないという現実です。お金を払って勉強するのとお金をもらって勉強するのとでは、金銭的にも心理的にもご家族に対しても後者の方がいいことは一目瞭然だからです。
次に大事なことは試験科目が多く、範囲が広いからこそ、基礎を確実にするということです。教科書や問題集などではランク付けがされている場合がありますが、例えばABCの3ランクがある場合、時間がない場合や勉強初期のころはあまり重要ではない(試験に出る可能性の低い)BCランクは後回しにして、まずはAランクを確実にものにすることが先決だと思います。
特に、私と同じように40代以降から勉強を始められた受験生にとっては、忘却との戦いになります。とにかく問題を繰り返し解いて、記憶が曖昧なところはテキストに戻って知識として定着させていくことが大事だと思います。
司法書士試験は合格率が低いため、合格点付近では受験生がひしめいています。そのため、突出してできる受験生を除き、多くの受験生は少しのことで順位がかなり入れ替わります。決して無責任なことは言えませんが、合格水準にあるのなら諦めないことが本当に大事だと思います。
択一式
択一式は概ね組み合わせ問題として出題されます。例えば私が受験していた当時の公認会計士試験では概ね正誤問題(正解は何個か、誤りは何個か)が出されていたのですが、正誤問題の場合はすべての肢に目を通す必要があります。しかし、組み合わせ問題の場合は消去法が使えるため、すべての肢に目を通す必要はないのです。
司法書士試験の、特に午後はとにかく時間との戦いで3時間あってもじっくり解いている時間はありません。このときに軸がブレずに消去法を使えると大幅に時間を短縮することができ、記述式に多くの時間を回すことができます。
ただし、勉強を始めたばかりのときは基礎があやふやなため、軸が軸になっておらず、まともに点数が取れません。まずは基礎を確実にして軸をブレないようにするのが最優先となります。軸がブレなくなると、少なければ2問、多くても3問程度検討すれば答えが出せる場合も多く出てきます。つまり、読まなかった肢はBCランクの可能性があり、試験に受かる上では重要ではなかったということにもなるのです。
また、問題は短い肢から検討すれば、問題の組み合わせによっては長い肢は読まなくても済みます。長い肢は読むのも大変ですし、またその長い肢の文章の一部分だけが間違っている場合、短い文章よりも見落とす可能性が高くなるため、回避できるのであれば回避するのが得策であると考えます。
ここで、「基礎を確実にする、軸をブレないようにする」と言うのは非常に抽象的な表現になり分かりにくいです。そのため、語弊を恐れずに具体的に言うと、確実に正解できる問題を増やす、すなわち過去問に強くなるのが択一攻略の早道だということです。
司法書士試験では毎年、少なくない量の過去問が再度出題される傾向にあります。このとき、解答がほぼ確実に分かる人はその肢を軸にして検討する肢を絞っていくことができます。この点、時間に余裕があれば全肢検討したほうがいいのですが、特に午後は時間との戦いになるため基本的には軸を定めて組み合わせで切ることを原則としながらも、軸が見つからない又は知識が曖昧で軸が定まらない場合のみ全肢検討を行うのが良いのではないかと思います。
記述式
記述式の基準点は概ね5割程度で、択一式の出来にもよりますが概ね6割取れれば合格ラインに乗る場合が多いと思います。
択一式の場合、多くの合格レベルの受験生は30問弱程度(80~85%程度)取ってきます。それと比べると6割程度でよいというのは少し気が楽になります。
ただし、記述式は問題量が多く、何を聞かれて何を答えないといけないのかを正確に把握する訓練が必要であることに加えて、いわゆるひな形を勉強することが必要となります。例えば、相続で所有権が父から母に移転するという場合、「登記の目的:所有権移転 原因:年月日 相続」という型がすぐに正確に出てこないと点数が伸びないのです。
私の場合は、まず論点を抽出できる短い問題集を解いて感覚をつかみ、その後はいわゆる本試験ベースのフルサイズ問題(過去問や予備校の答練など)を時間内に解く練習をしました。と言うのも、この両者は似て非なるもので、フルサイズ問題では問題量が多いのに加えて各所にちりばめられた情報や条件などを集約してまとめる能力が要求されるからです。
記述式の勉強方法は、書店で問題集を立ち読みしたり、YouTubeなどで予備校講師の解説を聞いたり、模擬講義を受けたりすることによって自分に最も合いそうなものを選択するのがよいと思います。
また、午後の問題は前から順番に解いていくと、択一式、記述式(不動産登記法)、記述式(商業登記法)となり、試験後半の疲れが出てくるときに記述式を連続で解くことになり、手の疲れがピークに達します。私は、記述式と記述式の間に択一式を挟むことにより、手の疲れの軽減を図りました。
記述式はどちらから始めるかについては、ご自身の得意な方からでよいと思います。私は商業登記法のほうが安定して点数が取れていたため、商業登記法から始めていました。得意な方が短い時間で解答できるため、残りの択一と記述式に時間的な余裕を持たせることができるからです。ただし、年度によってはとても難しい問題が出る場合があるため、商業登記法が得意だとしても今年は難しいと思えば不動産登記法から解答する、適当なところで切り上げて次の択一式に行くなど臨機応変に対応するのがよいと思います。
なお、記述式についても過去問と同じような問題が出題される傾向にあるため、過去問の勉強は必須となります。上記の今回は難しい問題か否かも過去問を多く解いていることにより、今年は難しいかどうかが肌感覚で分かるようにもなります。
今後の展望
財産を数億円以上持たれている富裕層であれば、場合に応じて税理士、司法書士等の専門家を使い分けることも可能だと思います。
しかし、相続税の基礎控除額が下がった現在では例えば地価の高い地域に一軒家を持たれていれば、それだけで相続税申告を検討しなければならない時代です。その場合、専門家にご相談されたことがないケースもあるため、何をどの専門家に相談すればいいのかをいちいち調べなくても、できればワンストップでご相談したいというニーズがあるものと思われます。
この点、司法書士と税理士であれば、相続に関する問題を概ね解決することができます。もちろん、いわゆる争族の問題などは弁護士でないと対処できないため、司法書士と税理士で対応できない問題についてはどの専門家が必要かをお伝えし、場合によってはご紹介もさせていただきます。
弊事務所では、地域密着の相続のかかりつけ医として皆さまのご相談に応じていきたいと考えています。相続でお困りのことがございましたら、是非ご相談くださいませ。
※実際の司法書士業務のご提供時期は現時点で未定のため、追ってHPでお知らせさせていただきます。



を譲渡することになったのですが・・・-300x158.png)



