副業した時の所得税の取り扱いはどうなりますか?
近々、副業を始めようと思うのですが、確定申告はどのように変わりますか?
昨年、雑所得の範囲について改正が行われましたので合わせてご説明しますね。
事業所得か雑所得か
所得税はその所得の内容によって、配当所得や不動産所得など10種類の所得に分類されています。
大家さんであれば、不動産所得が本業になるかと思いますが、賃貸経営は客付けや管理などを管理会社へお任せできるため、ご自身の時間が自由になることが多く、副業を始められる方もいらっしゃいます。
一般的に、副業を行うと事業所得か、それとも業務に係る雑所得かという判定が問題となります。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。
他方、雑所得は公的年金等に係る雑所得に該当するものを除き、特にその内容について定義せず、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得とされています。
事業所得と業務に係る雑所得については、その所得を得るための活動の規模によって判定され、当該活動が事業的規模である場合には事業所得に、事業的規模でない場合には業務に係る雑所得に区分されるという関係にあるとされています。
改正後の所得税基本通達35-2の注書きでは、「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」こととされています。
上記社会通念の判定については、同通達の改正に係る解説の中で以下のように記載されています。
この社会通念による判定について、最判昭和 56 年4月 24 日では、「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」と判示しています。
また、東京地判昭和 48 年7月 18 日では、「いわゆる事業にあたるかどうかは、結局、一般社会通念によって決めるほかないが、これを決めるにあたっては営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の危険と計算における企画遂行性の有無、その取引に費した精神的あるいは肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、その取引の目的、その者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点が検討されるべきである」と判示しています。
したがって、その所得を得るための活動が事業に該当するかどうかについて、社会通念によって判定する場合には、上記判決に示された諸点を総合勘案して判定することとなります。
同通達の改正では、従来の考え方を維持しつつも、その範囲について①記帳・帳簿書類の保存があるか、②収入金額が300万円超か以下かという基準を用いて明確化を図っています。
事業所得と雑所得の税務上の主な違い
新たに事業を行った場合に、事業所得とするか、雑所得とするかでどのような違いがあるか、主なものを以下でまとめてみました。
項目 | 事業所得 | 雑所得 |
---|---|---|
他の所得との損益通算 | あり | なし ※1 |
青色申告 | あり | なし |
損失の繰越し | あり(青色申告の場合) | なし ※2 |
開業費 | あり | なし |
※1 雑所得内での損益通算は可能。ただし、雑所得の中でも先物取引やFX取引などは総合課税ではなく申告分離課税とされているため、総合課税の雑所得と先物取引に係る雑所得等との損益通算は不可(先物取引に係る雑所得等同士の損益通算は可能)。なお、FX取引について、国内であれば前述のように申告分離課税ですが、海外であれば総合課税となりますのでご留意ください。
※2 総合課税の雑所得について生じた損失は切り捨てられるため、他の所得との損益通算が不可なだけではなく、翌期以降への繰越も不可。ただし、先物取引に係る雑所得等については、「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付した確定申告書を提出することに加え、その後、連続して申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)を添付した確定申告書を提出することにより3年間繰越控除が可能。
ちなみに、開業費の定義は以下のとおりで、事業所得は対象となっていますが、雑所得は対象とされていません。
所得税法施行令第7条第1項第1号
開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)
雑所得となる新たな事業に係る研修費用などは事業の開始日後でないと経費にできないおそれがありますので、ご注意ください。