譲渡制限株式に係る譲渡等承認請求手続きの流れを教えてください

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社長

弊社の株式は譲渡制限が付いているため、実際に譲渡承認請求があった時の流れについて知りたいのですが・・・

さつき相続

手続きについて不備があると、譲渡自体が無効と言われてしまうリスクがあったり、買取り代金の供託についても会社の資金繰りに大きな影響がありますので、合わせて概要をご説明します

目次

譲渡制限株式について

会社は株主のものであり、重大な意思決定については株式を所有する株主が行うことになります。

そのため、株主が誰であるかは会社にとって重要事項であるため、株式を上場していない会社の大半は株式の譲渡について、会社の承認を必要としています。

上場会社は、証券取引市場(例えば、東京証券取引所)に株式を上場している会社を言います。
非上場会社は、証券取引市場に株式を上場していない会社を言います。

公開会社は、株式の譲渡等について会社の承認を必要としない会社を言います。
非公開会社は、株式の譲渡等について会社の承認を必要とする会社を言います。

譲渡等承認請求に係る大まかな流れ

①譲渡等承認請求

株式を譲渡しようとする株主は、会社に対して譲渡する株式の種類と株式数、譲受人を明らかにして会社へ請求します。

株式を譲り受けようとする人からも請求できますが、その場合は譲渡しようとする株主と共同して請求します。

②承認機関による承認・不承認の決定

原則として、取締役会設置会社では取締役会が、取締役会を設置していない会社では株主総会が承認機関となり、上記譲渡等承認の可否を決定します。

譲渡等について承認する場合は特段の問題は生じません。他方、もし承認しない場合、承認機関は譲渡等承認請求の日から2週間以内に、譲渡等承認の可否を譲渡等承認請求者に通知することが必要で、この通知を怠ると承認したものとみなされることになっていますので、注意が必要です。

また、譲渡等承認請求時に、もし承認しない場合には会社又は買取人を指定するように請求がある場合、どちらが買い取るかを決める必要があります。

承認機関について、会社法139条1項では「株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない」とされています。

この点、商業登記法62条では「会社の承認を要する旨の定款の定め」となっており、そもそも株主総会、取締役会という具体的な機関名までは求められていませんが、登記実務では株主総会、取締役会の承認という記載が認められています。

他方で、実務では稀に代表取締役を承認機関としている登記を見かけることがありますが、これについては見解が分かれているようで、取締役会の下位機関である代表取締役を承認機関とすることは認められないとする著名な会社法の先生もいらっしゃるのでご留意ください。

③会社又は指定買取人による株式の買取り

会社が買い取る場合

株主総会の特別決議で承認を得る必要があります。譲渡等の承認を請求した株主は、この決議について議決権を有しません。

上記決議後、会社は暫定的な買取金額(1株当たり(簿価)純資産価額。以下、同様)を供託し、この供託を証する書面と会社が株式を買い取る旨と買取対象株式数の通知を合わせて、②の不承認の通知をした日から40日以内にこの通知をしないと、譲渡が承認されたものとみなされます。

なお、会社が買い取る場合は自己株式の取得となるため、一定の財源規制が課されるため、分配可能額の限度内であることが必要です。

指定買取人が買い取る場合

取締役会設置会社では取締役会が、取締役会を設置していない会社では株主総会が指定買取人を決定します。

指定買取人は、会社が②の不承認の通知をした日から10日以内に指定買取人が株式を買い取る旨の通知をしないと、指定買取人が株式を買い取ることはできなくなり、別途40日以内に会社が暫定的な買取金額を供託し、この供託を証する書面と会社が株式を買い取る旨と買取対象株式数を合わせて通知しないと、譲渡が承認されたものとみなされます。

また、指定買取人が株式を買い取る旨を通知した場合でも、この通知前又は同時に暫定的な買取金額を供託し、この供託を証する書面を交付しないと、譲渡が承認されたものとみなされます。

④売買価格の協議

上記③の会社又は指定買取人の買取通知が適法になされた場合、会社又は指定買取人と譲渡等承認請求者は売買価格を協議により決定することになります。

ここで協議により売買価格が合意できない場合、上記③の買取通知があった日から20日以内に、裁判所に対して売買決定の申立てを行うことができ、期間内にこの申立てがない場合は前述の1株当たり(簿価)純資産価額×対象株式数が売買価格となります。

上記のように、譲渡等承認請求については期間がタイトで、供託金額も場合によっては多額になることもあるため、株式譲渡等の不承認が生じる恐れがある場合は、事前にご確認いただくのはとても有用だと思われます。

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