相続に係る名義書き換えで、戸籍謄本の束の代わりになるものがあると聞いたのですが・・・
相続の名義書き換えをする際に、亡くなった主人の出生から死亡までの戸籍謄本の代わりになる書類があると聞いたのですが・・・
法定相続情報一覧図のことですね。注意点と合わせて、ご説明します。
法定相続情報一覧図とは
ご自宅(土地、建物)や預金等の名義をお亡くなりになられた方から相続人へ移す際に、相続人を確認するために、お亡くなりになられた方の出生から死亡までの戸籍謄本を用意する必要があります。
不動産、預金、有価証券など、名義を移す際にそれぞれ、上記戸籍謄本の原本を提出するように求められるため、戸籍謄本を予備で多く取得するのでなければ、同時に名義書き換えを行うことが困難となるおそれがあります。
そこで、法務局で確認していただいた後に、下図のような「法定相続情報一覧図」を入手することにより、名義書き換えをスムーズに行えるようになりました。なお、法定相続情報一覧図の保管期間中(5年間)は写しを再交付していただくことが可能です。
法定相続情報一覧図の元となる戸籍謄本や住民票などの資料は相続人等で揃えて作成する必要がありますが、法務局ではこれらの内容を無料で確認していただけますので、当事務所でも積極的に活用させていただくことにしています。
なお、法定相続情報一覧図は利用者の便宜を図るために、交付を申し出られた相続人等の住所地、お亡くなりになられた方の本籍地又は最後の住所、お亡くなりになられた方が所有されていた不動産を管轄する登記所の登記官に対して請求することとされており、選択肢が多く用意されています。
法定相続情報証明制度の手続の主な流れ
- お亡くなりになられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等を収集
- 法定相続情報一覧図を作成
- 法務局へ上記戸籍謄本等、法定相続情報一覧図を提出
- 登記官による確認、法定相続情報一覧図の保管
- 認証文付き法定相続情報一覧図の写しの交付、戸籍謄本等の返却
- 交付を受けた法定相続情報一覧図を使い、名義書き換え
法定相続情報一覧図を相続税申告書に添付する際の注意点
図形式で作成する
法定相続情報一覧図は上記法務局HPの例のような図形式のほかに、お亡くなりになられた方や相続人を単に列挙する列挙形式で作成することができますが、後者の列挙形式では相続人の法定相続分が確認できない場合もあるため、相続税申告書に添付する場合は図形式のものが求められます。
続柄は戸籍上の続柄(長男、長女、養子など)で記載する
続柄について、単に「子」と記載することも可能ですが、「子」だけだと実子か養子かの区別ができず、相続税計算における法定相続人の数が不明確となるため、戸籍上の続柄(長男、長女、養子など)で記載する必要があります。
(ご参考:国税庁HP)
その他の注意点
法定相続情報一覧図において、各相続人の住所記載は必須ではありませんが、記載しておくと相続登記の際に住民票等の書類提出を省略できます。
法定相続情報一覧図は戸籍謄本の代替物であるため、戸籍謄本に記載されない相続放棄や相続欠格については法定相続情報一覧図においても記載されず、相続放棄や相続欠格のない他の相続人と同様に相続人として記載されますので、別途確認する必要があります。
他方、推定相続人の廃除については戸籍謄本に記載され、相続する資格がないことが明確になるため、法定相続情報一覧図においても相続人として記載されません。
法定相続情報一覧図は戸籍謄本等を元に作成するため、お亡くなりになられた方や相続人が日本国籍を有せず、戸籍謄本を提供できない場合、法定相続情報証明制度は利用できません。