分譲マンションの評価方法が変わったため、評価額が高くなるかもしれません
タワーマンションが相続税の節税になると新聞等で騒がれていたこともあり、評価方法が変わることになったそうなのですが・・・
はい。令和6年1月1日以降の相続等により取得した一定の分譲マンションの評価方法について個別通達が出されましたので要注意です
概要
従来、居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)の評価は、建物については固定資産税評価額に1.0乗じて、また土地については路線価等により評価を行った後に敷地権割合を乗じて計算されていました。
この評価方法によると、例えば1棟に数百世帯が入るタワーマンションでは実勢時価との乖離が大きいことが前々から指摘されており(東京のタワーマンションだと実勢時価の2割程度になっているものもありました)、今回ようやく大きな改正がなされました。
乖離の理由として、①タワーマンションの実勢時価は、眺望やステータスによって上層階に行けば行くほど高額になっていくところ、建物の固定資産税評価額はその変動ほどには変わらなかったこと、②土地の価格についてはマンションの敷地を数百世帯で按分することによって低い評価に留まっていたことなどが挙げられます。
上記の相続税評価額と実勢価額の乖離の大きさを利用して、相続税を免れようとする悪質な事例が増えてきたことから、今回の改正に繋がりました。
また、今回改正された評価方法が適用されるのは、いわゆる居住用の分譲マンション(居住の用に供する専有部分があるもの)であることから、例えば以下のものは対象外とされています。
① 主として居住用でないもの(事業用のテナント物件など)
② 区分建物の登記がされていないもの※
③地階を除く総階数が2以下のもの(総階数が2階の低層集合住宅など)
④一棟の区分所有建物に存する居住の用に供する専有部分一室の数が3以下であって、そのすべてを区分所有者又はその親族の居住の用に供するもの(二世帯住宅など)
⑤棚卸商品等に該当するもの
※ 一棟所有の賃貸マンションなどは、従来の評価方法となります。また、借地権付分譲マンションの敷地として使用されている貸宅地(いわゆる底地)についても従来通りの評価方法となります。
評価方法
建物については、従来の区分所有権の評価額(家屋の固定資産税評価額×1.0)に区分所有補正率(後述のように補正が不要な場合もあります)を乗じて計算します。
土地については、従来の敷地利用権の評価額※に区分所有補正率(後述のように補正が不要な場合もあります)を乗じて計算します。
※ 路線価方式の場合は、路線価を基とした1㎡当たりの価額×地積により評価します。倍率方式の場合は、固定資産税評価額に評価倍率を乗じて評価します。
なお、上記評価の対象となる分譲マンションが賃貸されている場合は、上記評価額をもとに貸家、貸家建付地の評価を加味します。
また、小規模宅地等の特例を適用する場合も、上記評価額をもとに計算することになります。
区分 | 区分所有補正率 |
---|---|
評価水準 < 0.6 | 評価乖離率 × 0.6 |
0.6 ≦ 評価水準 ≦ 1 | 補正なし |
1 < 評価水準 | 評価乖離率 |
(注1)区分所有者が一棟の区分所有建物のすべての専有部分及び敷地のいずれも単独で所有している場合には、敷地利用権に係る区分所有補正率は1を下限とすることとされています(区分所有権に係る区分所有補正率には下限はありません)
(注2)評価水準=1÷評価乖離率
(注3)評価乖離率=A+B+C+D+3.220
評価乖離率がゼロ又はマイナスの場合、区分所有権及び敷地利用権の価額は評価しない(評価額はゼロ)こととされています(敷地利用権については、注1の場合を除きます)。
A 一棟の区分所有建物の築年数※×△0.33
※建築時から課税時期までの期間(1年未満は1年)
B 一棟の区分所有建物の総階数指数※×0.239(小数点以下第4位切捨て)
※総階数(地階は含まない)を33で除した値(小数点以下第4位切捨て。1を超える場合は1)
C 一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階※×0.018
※専有部分がその一棟の区分所有建物の複数階に跨る場合(メゾネットタイプなど)は階数が低い方の階
なお、専有部分の所在階が地階である場合には、Cの値はゼロ
D 一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度※×△1.195(小数点以下第4位切上げ)
※敷地持分狭小度(小数点以下第4位切上げ)=敷地利用権の面積÷専有部分の面積(床面積)
敷地利用権の面積は以下のとおり(小数点以下第3位切上げ)
①一棟の区分所有建物に係る敷地利用権が敷地権である場合
一棟の区分所有建物の敷地の面積×敷地権割合
②上記①以外の場合
一棟の区分所有建物の敷地の面積×敷地の共有持分割合
ざっくり申し上げると、実勢価額に比べて相続税評価額が低くなりすぎているものは評価を引き上げようとする(評価乖離率の6割程度)ものです。
詳細、計算の具体例などは国税庁の資料(「居住用の区分所有財産」の評価が変わりました)をご参照ください。
また、実際の計算の際は居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書をご利用になられると計算がしやすくなっています。