相続した不要な土地を処分する~相続土地国庫帰属制度~

相続人数年前に遠方の土地を相続したのですが、不便なところで利用価値が低く、固定資産税がかかるだけで困っています・・・



最近できたある制度を利用すれば、その土地を国に引き取ってもらえるかもしれませんよ
相続土地国庫帰属制度とは
土地は立地がすべてと言われており、利用価値が高い場所であれば、ご自身で住むこともできますし、他人へ貸すこともできます。他方で、利用価値が低い場所だと、住むには不便で、借り手も付かない未利用状態になりかねません。
土地を所有している限りは、たとえ未利用であろうと原則として固定資産税がかかってきますし、土地の管理問題も生じます。
従来は上記のような問題を抱えた土地があると、誰も相続したがらず登記がほったらかしになっていましたが、現在はそのような土地所有者不明問題を解消すべく、相続登記の義務化が始まっており、令和9年3月31日までに相続登記が必要とされていて、これを怠ると10万円以下の過料が生じる可能性があります。
となると、このような不便な土地は売却してスッキリしたいと思われる方が多いのですが、不便な土地はそもそも買い手が付かないことも多いのですし、その土地が属する市町村に寄付しようとしても断られるケースもあるようです。
それでは、相続放棄をすればいいのではないかとも思えますが、相続放棄はAll or Nothingで不要なものだけを相続しないということはできません。
そこで、相続人がそのような不要な土地を手放せるように創設されたのが相続土地国庫帰属制度というわけです。
主な手続きの流れ
承認申請
まず、必要に応じて事前相談を行います。
その後、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した方が承認申請書を提出します(なお、士業へ依頼する場合は弁護士、司法書士、行政書士に限られますので、ご注意ください)。
その土地が共有である場合は、共有者全員で申請する必要があります。
申請先は、所在する土地を管轄する都道府県の法務局の不動産登記部門となります。ただし、申請ではなく相談するだけなら全国の法務局において対応可能とされています。
法務大臣(法務局)による要件審査と承認
審査手数料として、土地一筆につき14,000円が必要とされています。
なお、手数料の納付後は、申請を取り下げたり、審査の結果却下・不承認となった場合でも返還されません。
法務局では、提出された書面を審査し、申請された土地に出向いて実地調査を行うこととされています。
審査後は、帰属の承認・不承認の判断の結果について、承認申請者に通知が送付されます。
負担金の納付
上記で帰属が承認された場合、通知に記載されている負担金額を期限内(通知が到達した日の翌日から起算して30日以内)に日本銀行へ納付します。
負担金額は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額として計算されます。
| 宅地 | 面積にかかわらず20万円 ただし、一部の市街地※1の宅地については面積に応じて算定※2 |
|---|---|
| 田、畑 | 面積にかかわらず20万円 ただし、一部の市街地※1、農用地区域等の田、畑については面積に応じて算定※2 |
| 森林 | 面積に応じて算定※2 |
| その他(雑種地、原野等) | 面積にかかわらず20万円 |
※1 都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域
※2 面積が大きくなるにつれて1㎡当たりの負担金額は低くなる
決して安くはない負担金の納付となりますが、これからも固定資産税を支払い続け、次世代の子どもたちへ負の遺産を残すこととの比較考量になるかと思われます。
国庫に帰属
承認申請者が負担金を納付した時点で、土地の所有権が国に移転します。
なお、所有権移転登記は国において実施されることとされており、国庫に帰属した土地は国が管理・処分することになります。
制度の対象となる土地の要件
不要な土地を国庫に引き取ってもらった場合、今度は国がその土地を管理する必要があり、当然その費用は国民の税金が原資となるため、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。
すなわち、法令で定められた通常の管理又は処分をするに当たり、過分の費用又は労力を要する以下のような土地はこの制度を利用することができません。
却下要件
却下要件とは、その事由があれば直ちに通常の管理・処分をするに当たり過分の費用又は労力を要すると扱われるものとされ、承認申請をすることができません。
- 建物の存する土地 →申請時には建物を取り壊して更地にする必要があります
- 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
- 通路その他の他人による使用が予定される土地(墓地、境内地、現に通路・水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地)が含まれる土地
- 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
不承認要件
不承認要件とは、前述の費用又は労力の過分性について個別の判断を要するものとされ、法務大臣は承認申請された土地が次のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならないとされています。
- 崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5m以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
- 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
- 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
- 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地(隣接所有者等によって通行が現に妨害されている土地、所有権に基づく使用収益が現に妨害されている土地)
- 通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
・土砂崩落、地割れ等に起因する災害による被害の発生防止のため、土地の現状に変更を加える措置を講ずる必要がある土地(軽微なものを除く)
・鳥獣や病害虫などにより、その土地又は周辺の土地に存する人の生命もしくは身体、農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある土地(軽微なものを除く)
・適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が追加的に必要な森林
・国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
・国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地
詳細な手続き等は、法務省のHPもぜひご参照ください。







