相続財産に占める不動産の割合が高く、金銭での一括納付が困難な場合はどうすればよいですか?

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相続人

先祖代々の不動産はできるだけ次世代に残したいのですが、納税資金が不足しそうです。不動産を売却せずに済む方法はありますか?

さつき相続

はい。金銭での一括納付が困難な場合、延納(分割払い)という方法があります。

目次

延納とは

相続税などの国税は金銭で一括納付することが原則ですが、以下の要件を満たす場合には延納(分割払い)が認められる可能性があります。

1.相続税額が10 万円を超えていること
2.金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること
3.延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること(延納税額が100 万円以下で、かつ、延納期間が3年以下の場合は担保を提供する必要なし)
4.延納申請に係る相続税の納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること

4.の延納申請期限について、期限内申告の場合は相続税の納期限、期限後申告書又は修正申告書の場合はその提出の日、更正又は決定の場合は更正通知書又は決定通知書が発せられた日の翌日から起算して1月を経過する日となります

延納申請が許可された場合、課税相続財産に占める不動産等の割合に応じて5年~ 20 年間に亘って納付します。なお、延納では利子税がかかることに留意が必要です。

※ 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として一定の相続財産による『物納』が認められる場合があります。

延納することができる金額

原則どおり金銭で一括納付する他の納税者との関係上、納付税額全額の延納が認められるわけではなく、納期限までに金銭で納付することが困難な金額の範囲内で認められます。

延納することができる金額 = 納付すべき相続税額 ー 納期限までに納付することができる金額

納期限までに納付することができる金額は、相続した現預金等に相続人がもともと有していた現預金等を足し合わせて、そこから相続人の生活費等を差し引いた金額となります。

上記式は、「金銭納付を困難とする理由書」を使って計算し、生活費については前年の給与収入や事業収入から申請者本人は月10万円、配偶者その他の親族は月4.5万円、税金や社会保険料、その他生活費の検討に当たって加味すべき金額(住宅ローン、養育費、教育費など)等を控除することにより計算することになっています。

延納担保の設定

延納が認められた場合でも、延納税額および利子税の額に相当する担保を提供することが必要となり(延納税額が100 万円以下で、かつ、延納期間が3年以下の場合は不要)、以下の要件があります。

1.担保として提供できる財産の種類であること
2.担保として不適格な事由がないこと
3.必要担保額を充足していること

延納の担保として提供できる財産の種類は、以下のものになります。

  1. 国債及び地方債
  2. 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
  3. 土地
  4. 建物、立木及び登記・登録される船舶、飛行機、回転翼航空機、自動車、建設機械で、保険に附したもの
  5. 鉄道財団、工場財団、鉱業財団、軌道財団、運河財団、漁業財団、港湾運送事業財団、道路交通事業財団及び観光施設財団
  6. 税務署長が確実と認める保証人の保証

また、担保となる財産は一定の金銭価値を有するものでなければならないことから、一般的に以下のようなものは担保として不適格とされています。

  1. 法令上担保権の設定又は処分が禁止されているもの
  2. 違法建築、土地の違法利用のため建物除去命令等がされているもの
  3. 共同相続人間で所有権を争っている場合など、係争中のもの
  4. 売却できる見込みのないもの
  5. 共有財産の持分(共有者全員が持分全部を提供する場合を除く)
  6. 担保に係る国税の附帯税を含む全額を担保としていないもの
  7. 担保の存続期間が延納期間より短いもの
  8. 第三者又は法定代理人等の同意が必要な場合に、その同意が得られないもの

延納申請書、担保提供関係書類の提出

延納を行おうとする場合、延納申請期限(相続税の納期限等)までに延納申請者ごとに以下のような必要書類を作成することが必要となります。

・相続税延納申請書
・金銭納付を困難とする理由書
・延納申請書別紙(担保目録及び担保提供書)
・不動産等の財産の明細書(不動産等の価額の割合が75%未満の場合は提出不要)
・担保提供関係書類

上記のうち、「担保提供関係書類」を提出期限までに提出できない場合は「担保提供関係書類提出期限延長届出書」の提出が必要となります(他の書類は対象外です)。
→3か月を限度として、自身で決めた期間の延長を届出ます。もし当該期間までに提出準備が整わない場合は、さらに3か月を限度として自身で決めた期間の再延長を届出ます。再延長の届出は何回でも提出できますが、延長できる期間は延納申請期限の翌日から起算して6か月を超えることができませんので注意が必要です。

延納申請書が提出された場合、税務署長は、その延納申請に係る要件の調査結果に基づいて、延納申請期限(上記提出期限の延長を行った場合はその延長期限)から3か月以内に許可又は却下を行うこととされています。ただし、担保などの状況によっては、許可又は却下までの期間を最長で6か月まで延長される場合があります。

延納申請が許可されると「相続税延納許可通知書」が送付されます。
→延納許可通知書に記載されている各々の分納期限までに、分納税額と利子税を納付します。

延納申請が却下されると、「延納申請却下通知書」が送付されます。
→却下された相続税額の速やかな納付手続きを行います。

延納申請の却下事由には、以下のようなものがあります。

  1. 金銭による納付が困難な理由がないと認められる場合
  2. 担保の提供がされない場合
  3. 提出した書類の不備の訂正を求められ、届出により提出期限を延長したが、その延長した期限までに訂正などを行わない場合
  4. 担保の変更等を求められたが期限までに延長の届出もなく、新たな担保の提供がない場合
  5. 提出期限(延長期限)までに、担保提供関係書類の提出がない場合

延納申請が却下された場合、納付すべき相続税には、①(法定)納期限の翌日から却下の日までの期間については利子税が、②却下の日の翌日から本税の完納の日までの期間については延滞税がかかりますので、ご注意ください。

延納によっても納付が困難な場合

平成18年4月1日以後の相続開始により財産を取得した場合で延納の許可を受けた相続税額について、その後に延納を続けることが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額部分について、延納から物納への変更を行うことができます(特定物納)。

特定物納の申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じて、当初の延納条件による利子税を納付することとなります。

※より詳細な手続きや提出書類のフォームなどは、国税庁の相続税 贈与税の延納の手引をご参照ください。

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