相続登記に要した費用は必要経費になりますか?
大家さん
先日、相続税申告に続き、賃貸しているアパートの相続登記も終わって一安心です。
それは何よりです。今回の登記費用は必要経費に算入できますので、確定申告に備えて資料を保存しておいてくださいね。
目次
相続で引き継いだ不動産の取得にかかる費用の取り扱い
相続税申告が必要な場合、納税された相続税や税理士への報酬は原則として取得費や必要経費にできません(例外として、相続税申告期限後3年内の譲渡における取得費加算の特例があります)。
他方で、相続登記に係る費用(登録免許税や司法書士の報酬等)については、事業用でないものについては取得費に、事業用のものは必要経費に算入できますので、ご留意ください。
相続登記に係る費用の取り扱いについては、かつて取得費や必要経費には算入できないものとされていましたが、平成17年2月1日の最高裁判例※を受けて、現行の取り扱いに変わっています。
※裁判要旨は以下のとおりです。
- 受贈者が贈与者から資産を取得するために要した付随費用の額は,受贈者が同資産を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に当たる。
- ゴルフ会員権の受贈者が贈与を受けた際に支払った名義書換手数料の額は,受贈者が同会員権を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に算入される。
事業の用に供する不動産
例えば、賃貸されているアパートの相続登記にかかった費用は、不動産所得の必要経費として算入できます。
事業の用に供しない不動産
例えば、事業とは関係のないご自宅の相続登記にかかった費用は、別の場所に住んでいるため、売却される場合の取得費に算入できます。
なお、実際の取得費ではなく概算取得費(売買価額×5%)を使用する場合は上記相続登記に係る費用を概算取得費に算入することはできません。
他方、概算取得費と前述の取得費加算の特例とは併用が可能となっていますので、ご留意ください。